わしのパワーを甘く見てはいけない
『おぼっちゃまくん』の全編描き下ろし単行本を幻冬舎から
出すと言ったら、それは小学館から出すと言いだした。
コンテを読み終わってからだよ。それはないでしょ。
「コロコロアニキ」の計画では、とりあえず一本復活する話は
あったが、その後は「連載」の話すらなかった。
そもそも「アニキ」に連載しても、年3回しか描けないので、
単行本出すのに4年以上かかる。
そんなペースじゃ描いていられない。
「アニキ」の計画では、来年の夏に『おぼっちゃまくん』の
「自選集」を出すという話だった。
そのときに今回の1本を巻頭に載せるという話だった。
「自選集」はいいが、わしの野望を充たすものではない。
それどころか、今回の1本を「アニキ」の付録に載せる
という話もあった。
即座に拒否したが、わしの力量と野心に全然見合ってない。
今回の復活作品を読んでもらえば分かるが、圧倒的
スケール感である。それを付録か?
ふざけるんじゃネーコ!と言いたい。
そこに幻冬舎の志儀氏から「描き下ろし単行本」の話が
あった。
これは乗るしかない。わしの野望に釣り合ってる!
一気に半年で13本描き上げれば、史上初の
「ギャグ漫画の描き下ろし単行本」になる!
これは他の作家がやったことがない。
ギャグ漫画家は連載をこなすのにフウフウで、締め切りが
なければ一本が上がらない。
わしは締め切りを自分で課して、ストイックに一本一本、
仕上げていくパワーを持っている。
このパワーがなければデカいバクチは打てない。
志儀くんはそこを分かってくれる。
小学館との付き合いは大切だ。
「SAPIO」の連載、単行本もあるし、小学館プロとの
付き合いもあるし、「コロコロコミック」はそもそも
『おぼっちゃまくん』の大ヒットを生んだ雑誌だ。
恩のある編集者もいっぱいいる。
だが、幻冬舎には志儀くんという個人的な戦友がいる。
これは義理人情の世界だ。
見城社長もここぞというときには博打を打ってくれる男だ。
そもそも『おぼっちゃまくん』の文庫本は幻冬舎から
出ていて、ずっと丁寧に売り続けてくれる。これはデカい。
いつでも『おぼっちゃまくん』を読みたくなった人は、
文庫本で入手できるのだ。
作家にとってこんなに有り難いことはない!
幻冬舎は「本」を大切に扱う出版社だ。
『おぼっちゃまくん』は文庫本が幻冬舎から出ていて、
商品化権を小プロに任せているという変なシステムに
なっているが、もはや『おぼっちゃまくん』は連載中断
してから30年も経っていて、専属契約ではない、
わし個人のものだということでしょ。
わしが今回の単行本化を幻冬舎でやるのは、
自由に描けるという特典もあるからだ。
今回も「○○族」という架空の「民族」を出したが、
実在しない「族」であるにも関わらず、これに編集者が
ずいぶん警戒していた。
そうだった、自主規制が色々あったんだ!
『おぼっちゃまくん』は発想を縛られてはいけない。
自由に伸び伸び、そして自分に厳しく、濃縮したギャグの
宝庫のような作品を創りたい!絶対に勝つのだ!!