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2015.12.05(土)

化血研に見る「道徳」の重要性

 

化血研が薬事法違反の血液製剤を長年にわたって
作っていた。
しかもこの不正を組織ぐるみで隠ぺいし、
当局の査察をごまかしていたという。

それも「薬害エイズ」事件の最中からずっとやっていた
というのだからあきれる。

最近、既視感のある事件ばかりである。

化血研の血液製剤の不正隠ぺい、正義を妄信する
シールズの学生デモ、911以降の対テロ戦争、
どれもいつか見た光景ばかりで、デジャブに
陥る感覚の連続だ。 

薬害エイズ運動は非加熱製剤で血友病の子供たちが
バタバタ死んでいたから、まさに緊急行動として
当時の若者たちは結集し、「個の連帯」で、
ラップによるデモを行った。
現在のシールズは、目の前に被害者がいない、
イデオロギーの行動であって、方法論だけ
薬害エイズ運動を真似ている。 

あのとき菅直人が厚生大臣に就任しなければ、
薬害エイズの解決はなかった。
菅直人は現在、原発事故の指示の是非をめぐる件で、
自称保守派に不評だが、薬害エイズのときは、
子供たちの大量殺人を国の責任と認めて、
謝罪・賠償に導いてくれた大きな功績がある。
立派な業績があるのだから、原発事故という前代未聞の
事態の対処だけで、菅直人のリーダーシップを
全否定する狭量な世論に、与するわけにはいかない。

それにしても化血研にしろ、原発ムラにせよ、
組織の暴走は結局、個人の「道徳観」による
「内部告発」でしか防げないのだろうか?
システムとして、不正の防止が不可能ならば、やはり
「道徳」を貫く「個」の力が重要だということになる。 

イラク戦争の時も、自称保守派は一匹が右向きゃ、
一斉に全体が右向くという魚群と化していたが、
あの魚群の暴走と「個人」で戦うことがいかに困難か
ということを、わしは身に染みて知っている。

愚民の集団性に個人の「道徳」で抗うことは、今もやはり
我々の「公共性」を守るための重要なカギなのである。