クマラスワミ報告書の悪意ある正義
村山談話・河野談話に未来はあるか?
第71回 「正義」のために「良心」を捨てた報告書
国連人権委の特別報告者・クマラスワミは、荒唐無稽としか
言いようのない、北朝鮮の元慰安婦と称する女性などの
証言4例を無批判で引用したばかりではなく、
こんな賛辞まで書き加えている。
「これが間違いなく彼女らの人生において最も屈辱的で
苦しい時間を思い出すことになるにもかかわらず、
勇気を持って証言をしてくれたすべての女性被害者に
心から感謝したい」
「これらの証言により、特別報告者はこのような軍隊性奴隷は
日本帝国陸軍によりその指導者も承知のうえで組織的かつ
強圧的に実行されたと信じるに至った」
前述したとおり、クマラスワミは東京で慰安婦問題について
異なる見解を持つ秦郁彦、吉見義明の両名から聞き取りを
行なっている。
秦からは、ビルマ・ミッチナでの連合国軍の調査報告書の
コピーを渡されており、そこには「彼女たちの暮らし向きは
よかった」とする数々の事例が記されていたにもかかわらず、
それを完全に無視したのだった。
しかもそればかりか、秦が「慰安婦の雇用関係は日本軍との
間ではなく、業者(慰安所の経営者)との間で結ばれていた」
ということを、連合国軍の報告書を示して説明したにも
かかわらず、クマラスワミは報告書に、
秦が「慰安婦は日本陸軍と契約を交わしている」と述べたと、
正反対にねじ曲げて書くという悪質なことまでやっていた。
結論が「正義」だと信じ込んだら、途中がどんなに
デタラメでも正当化されるとでも言うのだろうか。
一方、吉見義明も報告書のあまりのひどさに、
ヒックスの本と吉田証言に依拠した部分を削除するようにと
クマラスワミへ書簡を送っている。
しかし、それでも吉見は、報告書自体は支持すると言っていた。
ヒックスの本と吉田証言を削除したら、あとは例の
慰安婦証言しか残らないのだが、吉見はあれに
信憑性を認めるのだろうか?
学者なら報告書自体を否認しなければならないはずなのに、
それだけはしなかったのだ。
結局は吉見も、結果を「正義」と信じたら途中はどうでもよくて、
学者の良心などとっくに捨てていたのである。