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2025.03.30(日)

近くに来れば来るほど、なんだこんな奴かと、敬意を払わない。

 

『おぼっちゃまくん』のわしのペン入れがやっと終わった。
めちゃめちゃ神経、くたびれた。
出来上がった原稿を封筒に入れようとしたら、封筒が見つからない。

妻に「ペン入れ終わったから原稿を入れる封筒をくれ」と言ったら、自分が仕事中に頼まれたことにイラついて、「仕事場から持ってきたときの封筒に入れればいいじゃないか!」と言う。

真面目に朝から晩まで机にかじりついて描き上げても、「おつかれさま」の慰労のひとこともなしで、いきなり文句を言ってくる。

「持ってきた封筒の中に原稿が20枚あったら、そのうちの10枚が上がった時点で、封筒に入れて返しているんだ。
残り10枚も上がった時点では封筒がなくなっている。
そういうこともあるんだ。どこかに封筒がないか探してくれ」と、言葉を尽くして説明しなければならない。
この説明だけでも、わしは疲れ果てる。
するとその説明の途中で「分かった、分かった」と言葉を遮る。ムチャクチャ腹が立つ。

妻は妻で、100歳近くの両親の精神的支柱にならねばならず、老いゆえの病も抱えていて、躁鬱の差が激しくて同情もしてやらねばならない。

わしは常に自分の両親に感謝の念を捧げている。
「早く死んでくれてありがとう」と。

漫画家生活50年、老骨鞭打って、長時間の集中力で描いているのに、妻にすら敬意を払われない男・それがわしである。
イエス・キリストが生まれ故郷に帰ったら、誰も自分のことなんか尊敬しないと聖書に記述があるらしい。

遠くから見ると、恐れ多いと崇拝する者だって、近くに来れば来るほど、「なんだ、単なる足腰弱ったジジイじゃないか」とマウントをとって見下すものだ。
長生きは危険だ。どこかで幕を引く準備をしなければならない。そのタイミングはいつか?
人生まだまだ重大な課題があるもんだ。