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2017.02.13(月)

絵の上手さと漫画の上手さ

 

最近、絵のことを褒められる機会が度々あるが、妙に
複雑な感覚が襲ってきて、あまり嬉しいと思わない。 

「東大一直線」でデビューしたとき、「日本一絵が
ヘタな漫画家」とか「インクのシミ」とか言われたが、
一方で「この絵がいい」とか「ピカソみたいでいい」
とか言う人もいた。 

人は絵がリアルに近づけば上手いと言う傾向がある。
デッサンが出来たものすごい画力の漫画家は最近多い。
いや、画力のある、上手い漫画家ばかりになってきて、
漫画誌は衰退に向かっている。 

最近の漫画誌は「女子読者」に支えられている。
女子は「きれい」な絵が好きなのだ。
これが漫画家にとっては恐ろしい罠だと思う。 

昔の「少年ジャンプ」は一流漫画を小学館や講談社に
独占されて、新人を大胆に起用したため、絵のヘタな
漫画家ばっかりだった。
だが、その絵のヘタさ加減の中に、強烈な個性があった
から、子供たちは、そこに反応したのである。 

わしは漫画の絵の上手さは、画力の達者さとは、
違うんではないかと思っている。
画力の達者さでは、プロの画家にはかなわない。 

岡本太郎が言っていたが、「きれい」と「美しい」は
違うというのが、わしの感覚に一番近い。 

こういう話を一般人にしてもしょうがない。
「笑えた」「興奮した」「面白かった」「このキャラが好き」
というような漠然とした読者の感想が一番うれしい。 

絵が上手いと言われるようになったら要注意。
いかにデフォルメするか?
いかに勢いで描くか?
いかに毒を注入するか?
そう心がけていなければ、堕落してしまうと自覚して
いなければならない。