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2016.06.01(水)

顰蹙覚悟の「民主主義という病い」

 

昨夜の「重版出来!」は漫画家と編集者と出版社の販売員と
書店販売員のサービス精神を描いたドラマだが、
書店そのものがどんどん潰れている現在のシビアな状況を
描いていた。
制作者サイドが力いっぱいサービス精神を発揮しても、
そもそも書店が潰れていくのでは話しにならない。
本をAmazonで買うようになったことも一因だが、そもそも
書店でじっくり本を選ぶような人が減少している。
つまり本を読む余裕がなくて、暮らしでいっぱいいっぱいの
人が増えてしまったのだろう。 

本を買う人、漫画を買う人は、中間層だった。
かつては一億総中流と言われるほど、暮らしが安定した層が
圧倒的多数だった。
将来不安が少ないから文化を楽しむ余裕もあった。
若者にしても浅田彰の「構造と力」などの難解な本を読む
ことがブームになっていた頃もあった。 

やはり日本が新自由主義に舵を切ってからだろう。
小泉構造改革の路線は、新自由主義だから、格差が拡大すると、
あんなに警告したのに、国民は「民主主義」で小泉政権を
選択した。
弱肉強食の株主資本主義にしてはならないと、あんなに警告
したのに、国民は小泉純一郎という人間のキャラクターが
気に入って、自分たちの首を絞める政策を選んだ。 

アベノミクスも同様だ。
富裕層が一層儲かるだけで、一般庶民へのトリクルダウンは
ないと、最初から警告していたのに、国民は全然聞く耳を
持たず、「民主主義」で安倍政権を応援した。 

その結果、もっと貧富の格差は拡大して、正社員を減らし、
非正規社員を増やすことによって、失業率は減って行った。
実質賃金を減らすことによって、就業率を高めた。
すると、ライジングで泉美さんが書いてくれたように、
年収300万以下の未婚男性が60%以上なのに、
女性は年収400万以上の男性を求めているという男女間の
ギャップが生まれている。
年収400万以上の男性は今や25%しかいないというのに。
将来不安が強すぎて、女性が男性の収入で選ぶのは
已むを得ないだろう。
だから将来的に男性の3人に1人は独身になるという。 

国民は自分たちの選択の誤りに気付かない。
気付くどころか、慣れてしまって、不満も生まれない。
グルメ漫画の世界は、安い食い物のうんちくを語る作品しか
ウケない。
グルメとは美味礼賛だと思っていたが、最近はB級グルメの
うんちくを語る漫画しか売れないのだ。
わしはその飼いならされた舌を自覚させるために、わざと
顰蹙覚悟の富裕層グルメ漫画を、『民主主義という病い』に
挿入していった。 

そもそも民主主義否定が世界中で顰蹙ものの意見なのである。
飼い慣らされた者たちに、なるべく顰蹙を買うように、
描くことを心掛けたが、長年のわしの愛読者は違和感なく
いつもの小林よしのりのブラックユーモアだと受け取る。 

だが、一般的にはこのような顰蹙ものの思想と、顰蹙ものの
グルメ漫画の組み合わせが、どう受け取られるか分からない。
しかし、本来、読書の醍醐味というのは、このような
顰蹙覚悟の毒を食らうことに、スリルと興奮を味わうもの
ではなかったか? 

果たして社会は『民主主義という病い』を恐れるか?
毒を食らう知的好奇心は健在か?
わしはそれを観察して、次の戦略を練ろうと思う。